しんとく丸、俊徳丸、身毒丸

この週末は、オフィスのお引っ越し。さりながら、今回は全くのお客さん状態で、自分のことだけしています。自分のファイルや荷物だけ箱詰めして、引っ越し当日も当然の如く、出社せず・・・これまでは、お引っ越しのたびに立ち会っていましたから、ありがたいこと!こういうのも楽でいいですねぇ。

蜷川幸雄演出 「身毒丸 復活」 (さいたま芸術劇場)

すっかり春、の日曜日。さいたまは、近いのか遠いのか。会社帰りに行くほうが、埼京線で乗り換えなしで楽なんですけど、上演時間が長いと、帰れなくなっちゃいますからね。それで日曜日のマチネを観劇。

このお芝居、寺山修司の演出で天井桟敷が初演しています。そのためか、蜷川演出に代わってからも、異形の大道芸人たちのあつかいなど、天井桟敷っぽいところがたくさん残っています。むしろ、蜷川演出としてはおとなしい。

買ってきた母親、撫子とその連れ子のせんさく、父親と身毒丸の4人で遊ぶ家族合せの場。お父さんがいて、お母さんがいて、子供がいて、それが家族というものだという父親・・・そう言いながらも、ゲームはいつも身毒丸を抜かして進んでいきます。だから、身毒丸のもっている4枚の母親の札は、誰の手にも渡ることはありません。きわめて象徴的な場面です。

撫子は、見られるのを嫌って身毒丸の目を潰します。身毒丸抜きの3人の家が営まれる一方で、視力を失った身毒丸は、自分の探し求めていた母が、実は撫子に他ならないことを知るのです。そして、身毒丸が引き起こす悲劇と家の崩壊・・・このあたりからは、寺山修司と岸田理生が戯曲を書いた70年代という時代を感じます。

しんとく丸の話は、大学時代、何十年も昔に「摂州合邦辻」の講義で聞いたのが最初です。説教節の「しんとく丸」や、能に題材を求めた三島由紀夫の近代能楽集中の「弱法師」も同じお話。それらの集大成としてあるのが「摂州合邦辻」というわけです。また、継母と息子の恋という物語は、洋の東西を問わず古くから数多く存在するため、比較演劇という観点から取り上げるときに格好の素材となるのだそうです。

そんな大昔の知識があまり邪魔にならないのは、撫子を演じる白石加代子さんの存在感があるからでしょうか。藤原竜也くんは、第一声を聞いて、「あら、声が変わった」。「オレステス」の時と、発声が変わったのでしょうか。竜也くんの演技は、いつもストレートです。技巧に走ることはない。ともあれ、産みの母を求める気持ちの切実さは、見事に表現されていたと思います。

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