麦の穂をゆらす風
ケン・ローチ監督 「麦の穂をゆらす風」 (DVD)
今年はまだ一度も映画館に足を運んでいないような気がします。演劇だと、それなりに頑張って出かけていくのですが、映画だと「見逃してもDVDがある」とばかり、気が緩むのでしょうか。
さて、今年見た(もちろんDVDですが・・・)映画の中で、一番衝撃的だったのが、この「麦の穂をゆらす風」です。
独立運動とは一線を画して、自分は医者になる道を選ぼうとしたデミアン。ところが、幼なじみがイギリスの治安警察(特高みたいなものでしょうか)に虐殺され、また、ロンドンへ行くために乗ろうとした汽車の運転手の静かな抵抗を見、ついに自分も独立運動に身を投じることになります。デミアンの兄はIRAの幹部でした。やがて、英国が譲歩しアイルランドの権利を認めたとき、待ち構えていたのは、英国という共通の敵をなくしたアイルランド人同士の、過激派と穏健派の主権争いでした。とりあえず自治権を得たことを評価しようとする兄と、それには飽き足らず急進化していく弟・・・抗争のあげく、ついに、デミアンは兄の手で処刑されてしまいます。
アイルランド紛争を題材にした映画は「父の祈りを」「ボクサー」などこれまでにも何本か見ています。この「麦の穂を・・・」に描かれた時代が一番古くて、1920年代。それでもまだ100年と経っていません。最近の「クイーン」(まだ見ていませんが)を出すまでもなく、歴史的な事象を客観的に捉えようとするイギリス人の態度は、ともすれば感情に流されがちな東洋の島国の民とは両極端にあるような気がします。
強大な共通の敵の存在は、方針や哲学の違いを超えて、身内同士を団結させるものです。しかしながら、その楔が解けたとき、近親憎悪という怪物が姿を現します。スンニ派とシーア派の争いしかり、ツチ族とフツ族の争いしかり、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争しかり。わが国にも、連合赤軍の事件がありました。内戦ほど悲惨なものはありません。
人と人とが殺しあう戦いに、正しい戦争、正義や大義のための戦いなどというものは、ありえないと信じています。そんなものは、頭の悪い政治家のその頭の中にしか存在していないのです。
主義主張を声高に叫ぶわけではない、だからこそ、見るものの心がきりきりと痛む映画です。
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2007/09/30 23:54 | 映画 | COMMENT(0) | TRACKBACK(0) TOP



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