欲望という名の電車@東京グローブ座
女形の篠井英介が、杉村春子の当たり役だったブランチを演じるというので、見に行ってきました。北村和夫が演じたスタンリーは、息子の北村有起哉が演じます。これは、見ておかなくっちゃねぇ。(実は、日にちを間違えてチケットを取ってしまい、友人に半ば強引に引き取ってもらったり、取り直したり、いろいろ騒ぎはありましたが・・・)
作:テネシー・ウィリアムズ 演出:鈴木勝秀 出演:篠井英介/小島聖/伊達暁/菅原永二/Takuya/鈴木慶一/北村有起哉/明星真由美/押田健史/永島克
ヴィヴィアン・リーとマーロン・ブランドの映画も有名ですから、ストーリーは、ご存知の方が多いと思いますが、製作のアトリエ・ダンカンのWebサイトには、次のように出ています。(すみません。手抜きです。)
アルコール中毒で元教師のブランチは、妹のステラが暮らしている街ニューオリンズのフレンチクォーターへ、「欲望」という電車に乗り「墓地」という電車に乗り換え、「極楽」で降りてたどり着いた。
二人は南部の大農園ベル・リーブで育った、古き良き時代の上流階級の出である。上品に振舞うブランチの態度に、ステラの夫でポーランド系のスタンリーは我慢できず、事あるごとにステラとブランチにあたりちらす。
スタンリーの友人ミッチは、清楚なブランチに惹かれてゆき、ブランチはミッチの愛に、最後の望みをかけるのだったが・・・・・。
とりあえず、役者さんたちのことを。
パンフレットによれば、篠井英介さんは、杉村春子さんと北村和夫さんの舞台を録音したテープを、中学生の頃から聴き続けていたのだそうです。そのためか、ところどころ、あの甲高い独特の笑い声が聞こえてくるような気がしました。杉村春子のブランチというひとつの型があって、その上に篠井英介のブランチが乗っている、という感じ。最近では、樋口可南子さんや大竹しのぶさんもブランチを演じていますが、歌舞伎のように型から入る、という演じ方もありだと思いました。お上手です。
映画のスタンリー、マーロン・ブランドは美しい。容貌も肉体も。マッチョな男は嫌い、という私のようなへそ曲がりもたまにはいるでしょうが、たいていの女ならあの美しさにクラクラしてしまう。とにかく、セクシー。
日本人の常としてそういう類の美しさに欠けるなかで、北村有起哉さんの頑張りは認めてあげてもいいんじゃないでしょうか。スタンリーという男なりの複雑さが、上滑りせずに表現されていたと思います。ただ、声が、お父さんに似ていたのは、ご本人も予期せぬ誤算だったのでは・・・もうすこ〜し頑健な肉体持ち、それを舞台で晒していた和夫さんの姿が、どうしても浮かんできませんか?
女優さんお二人、よかったですよ。ステラ役の小島聖さんは、ちょっとお嬢さんっぽかったですね。もう少し「女」の部分が出ればもっとよかった。ユーニス役の明星真由美さん、初めて見た女優さんですが、素敵でした。
で、必見の舞台だったかというと、そうも言い切れないところがあります。蜷川さんの「偉大なるワンパターン」も食傷気味ですが、この演出には疑問符が付きます。余分な男(おそらく、死神の象徴?)や、シーンと合わない音楽、大きすぎてうるさいだけの電車の音・・・メッセージがはっきりしません。
それで、DVDを見直すだけでなく、手持ちの戯曲(ただし、小田島雄志訳)を再読してみました。なかなかに奥の深い戯曲です。いろんなところに、きちんと伏線が張られていて、それがクライマックスにつながっています。没落したフランス系の旧家、移民としては新しいポーランド系の労働者、夫婦の財産はすべて共有だとした「ナポレオン法」、ブランチの哀れな結婚生活とその後の堕落、絶望した人間が生きていくためにすがった欲望、などなど・・・それらがすべて題名に象徴され、集約される。
没落していく階級と新興の階級を対比させるというのはよくある設定ですから、その部分をことさらに重要視する必要はないのではないか、という気がしてきました。テネシー・ウィリアムズが描きたかったのは、ブランチという一人の女の悲劇であって、社会的な問題を提示しようとしたわけではないのですから。
2007/11/28 22:07 | 舞台 | COMMENT(0) | TRACKBACK(0) TOP



